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 1 企業間訴訟の主要な争点

企業間訴訟の最も典型的なケースは、契約不履行、つまり一方当事者が契約違反を行ったことによる損害賠償請求です。

契約不履行に基づく損害賠償請求において、争点となる箇所は、概ね以下の2点です。

 

① そもそも契約不履行が存在したのか

② 損害額はいくらなのか

 

 2 ①契約不履行の存在

契約不履行が存在したかという争点では、概ね以下の2点が争われます。

 

ⅰ 契約上、そのような義務が認められるのか

ⅱ 契約違反の事実が存在しているのか

 

ⅰの争点については、通常契約書の文言解釈の問題となります。

契約書が不明確に定められている場合には、この点について契約当事者の意思はどのようなものであったのかという点が争われることになります。

このような事態が生じないように、できる限り契約書は一義的に定まるよう作成しておく必要があります。また、できる限り広く、将来のトラブルの可能性となる事由を規定しておくべきでしょう。

この点については、裁判所が契約書などの客観的資料に基づき判断を下すことが通常です。

 

ⅱの争点については、契約不履行を行ったとされる当事者の事実経緯が問題となります。

この点については、メールのやり取りや証人尋問などの内容によって、裁判所が実際に存在したであろう事実を推認することになります。

 

 3 ②損害額

上記のように、契約不履行が存在したことを立証しただけでは、損害賠償請求は認められません。

損害賠償請求が認められるためには、原則として、請求を行う者が損害額についても立証しなければなりません。

企業間の契約で違反が行われた場合には、通常、違反が行われなければ得られたはずの利益が損害として位置づけられることになります。

この場合の利益とは、その契約から得られる売上高ではなく、そこから変動的に発生する経費等を控除した利益となります。

損害額の立証に関しては、通常、その契約に関するセグメント損益計算書を用いることになります。また、契約不履行となったことにより、会社全体の利益に影響を与える場合には、会社全体の損益計算書を用いて立証を行うこともあります。

このように、企業間訴訟においては、損害額立証において損益計算書という財務書類を用いることが往々にして見られます。

当然のことながら、この点について会計的知識を有している場合には、損益計算書を精査して、漏れなく損害賠償請求することが可能となります。

一方で、被告側として防御する際には、会計的知識を利用して、できる限り相手の主張する利益額を減額するよう働きかけることが可能となります。

 

 4 具体例

たとえば、今後1億円の売上に対して、8000万円の経費がかかることが想定されるセグメント損益が存在したとします。この場合の単純利益は、2000万円です。

10000万円
▲8000万円 
 2000万円

 

そのため、Aさんは、損害額が2000万円であるとして損害賠償請求を行ったとしましょう。

しかし、8000万円の経費の中には、1億円の売上が生じなかったとしても発生する、減価償却費が1000万円含まれていたとします。この減価償却費は、1億円の売上が得られなかったとしても変わらず発生することが予測されるため、実際のAさんの損害額は3000万円だったということが考えられます。

10000万円
▲7000万円 
 3000万円

一方で、2000万円の損害賠償請求を受けたBさん側に立った場合、過去の売掛金の貸倒率を考慮に入れるべきとの主張を行うことが考えられます。

仮に、過去10%程度の貸倒が発生しているのであれば、1億円の売掛金の内、1000万円は回収不能となることが予測されます。

そのため、1000万円の貸倒引当金を計上すべきと主張して、経費が9000万円となり、損害額を1000万円まで減らすことができるかもしれません。

10000万円
▲9000万円 
 1000万円

 

このように、表面上の損益計算書を眺めていても分からない主張が、会計と法務の双方の知識を有しているLaw & Accounting Teamにおいては可能となります。

なお、上記に記載した例は、分かり易く説明するため極めて平易な事項をあげていますが、実際の訴訟では各勘定科目に対して考え得る多数の主張を行い、訴訟展開することになります。