Q07. 人事異動命令(配転命令)には、必ず従わなければなりませんか
A. 原則として従わなければなりませんが、配転命令が不当な目的のためなされたときや、通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるときは、配転命令は権利濫用として無効になります。
まず、雇用契約締結に際し、労働者の職種や就業場所が限定されている場合には、原則として会社側が一方的に職種や就業場所を変更することはできません。
例えば、アナウンサーの採用試験を行い、アナウンサーとしての研修を受け、長年アナウンス業務に従事していた者は、アナウンス業務を行うことが雇用契約の内容とされていたと考えられるため、アナウンサー以外の業務に配転する命令は、そもそも行い得ないことになります(東京地裁昭和51年7月23日判決)。
しかしながら、通常は採用の際に職種や勤務場所を限定することは少ないですし、就業規則に配転命令を行う旨の規定が設けられていることが一般的ですので、会社側は原則として配転命令を自由に行いうる立場にあります。
もっとも、転居を伴う配転命令については、単身赴任や長時間通勤等の負担を労働者に課することになるため、無制限に会社が行いうるとすれば、労働者にとり退職を余儀なくされる事態も生じかねません。そのため、一定の場合には、配転命令が権利の濫用になるとされています。
この点、最高裁昭和61年7月14日判決は、「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない」と判示しています。
このように、配転命令は原則として有効であるため、配転命令の有効性が争われた多くの裁判例でも、配転命令は有効と判断されています。しかし、妻と3人の子供とで同居している夫に対する配転命令につき
- 長女が躁鬱病等の原因により同一病院での通院が望ましいとされ
- 次女が脳炎等の後遺症により精神発達遅延等の症状が出ており適宜介護が必要であるとともに
- 近隣に住む夫の父親は足が悪く
- 母親も体調不良を訴えており、夫が両親の農業等を手伝って暮らしている
という状況において、単身赴任を命じる配転命令を行うことは、母親に全ての負担を課してしまう結果になることに配慮し、権利の濫用にあたり無効と判断したケースもあります(札幌地裁平成9年7月23日)。








![著書: [弁護士がきちんと教える] 交通事故 示談と慰謝料増額(あさ出版)](../img/ban_book05.jpg)
